Works

【開催レポート】「民間プレーヤーの連帯でつくる、百貨店閉店後のまちの未来」〜4つのまちに学ぶ、公民連携とエリアリノベーション【岩手県花巻市】の事例〜

リノベーションスクール 事例紹介 家守 構想 花巻市

「変化が起きるまち」にスポットを当てて4つの先進事例に迫るオンラインイベント「変化が起きるまちは何が違うのか?〜4つのまちに学ぶ、公民連携とエリアリノベーション」。

第四弾で取り上げるのは、岩手県花巻市です!

岩手県第4の都市・花巻市(人口約9万人)のマルカン百貨店が惜しまれながら閉店したのは2016年6月のこと。2017年2月に年間36万人の人たちを集めてきた「マルカン大食堂」の再オープンからはじまったその再生プロジェクトは、2018年12月に「DPRTMENT SKATE SHOP&PAR」、2020年7月に「花巻おもちゃ美術館」がオープン。

立地適正化計画を視野にして進めてきた花巻市のまちなか政策は、元百貨店の再生のみに留まらず、花巻中央広場などの公共施設整備と共に、周辺エリアにブルワリーやカフェ、土産店や福祉施設など、次々と民間プレーヤー主導の新たなコンテンツを生み出し、百貨店閉店後の花巻市のまちなかに新たなチャレンジと暮らしの選択肢を増やしてきました。

百貨店が閉店する街にも未来があることを確実に示してくれている花巻市の取り組みについて、花巻市職員の伊藤ケイ子さんと、3名の民間のみなさんにお話をお伺いしました。

本記事では、2024年8月1日に開催したこのオンラインレクチャー&トークセッションをレポート形式でお届けします。

【ゲストスピーカー】

前半では、花巻市職員の伊藤ケイ子さんに花巻市の概要とこれまでの取組みについて、民間プレーヤーの小友康広さん・高橋亮さん・照井智子さんにはそれぞれの取組みについて、お一人ずつお話していただきました。

①伊藤 ケイ子(花巻市)

伊藤さんは、花巻市でリノベーションまちづくりがはじまったときに都市再生室に所属し、まちづくりの担当をしていました。現在は、市民会館担当になり、リノベーションまちづくりでの経験を活かしながら公共施設マネジメントを担当しています。

画像

花巻市は農業を基幹産業とし、観光や自然環境も豊かで、歴史や文化のある地域です。とはいえ、全国同様に中心市街地の衰退、行政の財源不足、高齢化の問題などを抱え、暮らしの質が殺伐としてきたことに伊藤さんは課題感を感じていました。

マルカンビルの再生のタイミングで、市としてリノベーションまちづくりを推進することを決め、マルカンビルの周辺に、密度高くコンテンツが集積し、より都市機能を拡大させるという戦略のもと、2017年にリノベーションスクールがはじまりました。そこからわずか半年で、5件のプロジェクトが始動。それからも続々と新たなプロジェクトが生まれます。
それと同時に、行政の動きとしてハコモノの整理として病院・公営住宅・広場の整備が進みました。

画像

このタイミングが合うことが重要だったと伊藤さんはおっしゃいます。この躍進力を維持し、次への飛躍と定着のため、行政・民間・これからまちづくりに関わる人のための共通言語となる構想づくりを行いました。

伊藤さんは、まちづくりに関わる人を以下のように分類します。

新しい発想:クリエイター、デザイナー
それを実現する人:プレーヤー
理解し支援し普及する人:サポーター
次のシーンへと誘う人:ディレクター

画像

行政としては、ディレクター的存在とよく話し、政策展開することが重要だと思うとのことです。

最後に、「激変する世の中で最も恐ろしいことは何もしないこと」という言葉をいただきました。

②小友 康広(上町家守舎、花巻家守舎)

画像

小友さんは創業119年の木材店の4代目で、花巻と東京で6社を経営するパラレル経営者です。東京でIT企業での修行を経て花巻にもどり、固定資産税を払うだけになっていた駅前の小友ビルの取り扱いを検討していタイミングで、花巻市から岩手県紫波町のオガールの運営者である岡崎政信さんの勉強会に誘われます。そこでリノベーションまちづくりと出会い、ビジネス手法としての有効さを感じました。

そして、花巻駅前エリアを「チャレンジする大人があつまるまち」へすることを目的に2015年に花巻家守舎を組成しました。小友ビルは解体して駐車場にする案もありましたが、リノベーションによる事業化に優位性があったため、1、2階にテナントを誘致し、3階は家守舎のオフィス、4階をシェアオフィスとして活用することになります。

画像

小友ビル開始から約5年で50人強のチャレンジする大人が集結し、リノベーションによる出店が5件、駐車場がコンビニになるなど、エリアが変化しだします。

そんななか、2016年にマルカン百貨店の閉館が決まり、リノベーションまちづくりの手法でなにかできるのではないかと考えるようになります。

画像

当初は全フロアを埋める案を考えていましたがそれでは回収に10年以上かかってしまいます。そこで、大食堂を残すという目的のもと、人が出入りする1階と大食堂だけを運営する方針とし、2017年2月にマルカンビルが復活しました。

地下1階にスケボーショップ&パークが入るなどの予想外の良い動きも生まれています。小友さんは当初、このスケボーショップ&パークが儲かることは想定していませんでしたが、毎年業績が成長しています。

画像

花巻市でのリノベーションスクールの初開催から7年が経過し、リノベーションまちづくりが浸透してきたなか、小友さんは、住人が主体者のなりわいを作っていくために、公共空間の活用に注目しています。
というのも、中心市街地とロードサイドでの商売を比較したときに、中心市街地はコミュニティ支援や歴史・文化的側面の優位性はあるものの、そのほかの側面においてはロードサイドの方が有利です。しかし、公共空間を活用することで車中心から人中心の心地よさや、仕入物販業からなりわいの増加を見込めます。

市と連携して社会実験を行ない、将来的には花巻の上町商店街エリアが歩行者中心の空間になることを目指しています。

画像

③高橋 亮(トルクスト)

画像

「花巻の若者が誇れるまちをつくろう」というビジョンを掲げ活動している高橋さん。
飲食業を中心に様々な事業を手掛けてきたなかで、小友さんの「花巻をチャレンジする大人の集まる街にしよう」というビジョンに惹かれ、小友ビルの1階をセルフリノベーションし、JOE’S LOUNGEをオープンしました。

画像
画像

その後、初年度のリノベーションスクールに参加。対象案件での実現は叶いませんでしたが、駅前でブルワリー併設のLit work placeをオープンさせました。
かつてスノーボードのプレーヤーとして全国各地を転戦していた時は「地元の自慢ができなかった」そうですが、今では、昼はカフェとして夜はバーとして営業されているここが、たくさんの若者たちが集まってくる場所にもなっています。高橋さんたちのイケてる花巻をつくるチャレンジはまだまだ続きます。

④照井 智子(エンドウ花店、ココ・タベルバ・ラパン​​)

画像

照井さんは、花巻のまちなかから西へ1キロほどのエリアを拠点に、弟さんが4代目を務めるエンドウ花店と、福祉に携わっていた妹さんが起業した一般社団法人ココ・アルバに所属しています。

リノベーションスクールに参加した際は高橋さんと同じチームで、事業計画の立て方などが良い経験になったとのこと。

もともと事業用の物件を探していた中で出会った古い喫茶店を、リノベーションスクールでの経験を活かし、ココ・タベルバ・ラパンをオープンさせました。
ここで子供食堂をベースとしたコミュニティ食堂もしており、起業の動機となったサービスの隙間から落ちている人への支援を形にしています。

画像

リノベーションスクールで同じチームだったメンバーからお惣菜屋さんをやりたいという声があったので、キッチンを貸し、つくった惣菜を卸して販売するという連鎖も生まれています。

また、喫茶店のすぐ向かいにあり、ご自身のおばあちゃんも入られていたデイサービスの事業継承をすることにもなりました。元オーナーが高齢を理由に閉鎖を決定したのが2021年2月で、自分たちでやろうかと思ったのが3月末。そこから7月には名前を変えてオープンにいたります。このスピード感も、リノベーションスクールでの学びが影響しているようです。

画像

マルカン百貨店周辺で起きたエリアリノベーションは、少し距離の離れた照井さんが拠点とするエリアにも波及し、影響を広げています。

【トークセッション】

後半は、リノベリングの中島明も加わり、花巻市のこれまでを振り返りながらそれぞれが感じていること・考えていることをお話していただきました。

画像
左上:中島 明(リノベリング)、中央上:伊藤 ケイ子(花巻市)、右上:小友 康広(上町家守舎、花巻家守舎)、左下:照井 智子(エンドウ花店、ココ・タベルバ・ラパン​​)、中央下:高橋 亮(トルクスト)

リノベーションスクールをやったことで、リノベーションまちづくりについての共通言語を持った人、なにかやっていいんだなという認識を持った人の総数が多く、そこに行政が関わり信用付けてくれることでその循環がさらに広がっていることを実感していると、小友さんがおっしゃいました。

加えて、2021年4月から、リノベーションまちづくりに関わるプロジェクトのメンバーが集まり進捗を共有する会を開き、コアメンバー約6人が月に1回、サブメンバーが3ヶ月に集まるようにしていて、ここから生まれた新たなチャレンジをサポートすることで、次々とプロジェクトを実現させています。

みなさんのお話を聞くと、「まちづくり」を掲げているわけではなく、「自分の動機や楽しさ」を大事にされていることがよくわかります。そのうえで、お互いが連携し、応援しあえる状況を作り出せていることで、新たなアイデアや予想外のよいことが生まれ、まちがどんどん楽しくなっているようです。

伊藤さんいわく「花巻はまだ始まったばかり」とのこと。
今回ご登壇いただい4人のお話を聞くだけでもこれからの展開が楽しみですし、まちにはもっと可能性が溢れているのだと思うと、その熱量を現地で体感したくなります!

前の記事
一覧にもどる
次の記事