Column
エリアマネジメントで進める持続可能なまちづくり~地域の魅力と課題を自分たちで解決するしくみ~

1. はじめに:なぜ「エリアマネジメント」が注目されているのか
近年、「エリアマネジメント」という言葉を耳にする機会が増えてきました。これは、人口減少や高齢化が進む中で、まちの魅力や価値を地域主体で維持・向上させていこうとする取り組みです。
これまでのまちづくりでは、行政が計画を立て、予算をつけて事業を進めるという「行政主導型」が主流でした。しかし、地域ニーズが多様化し、行政だけでは全てに対応しきれないという現実があります。そんな中、民間企業や地域住民が主体となり、行政と連携してまちの管理や運営に関わっていく「エリアマネジメント」が、持続可能なまちづくりの新たな形として注目されています。
2. エリアマネジメントとは
エリアマネジメントとは、特定の地域(エリア)を対象に、そこに関わるさまざまな主体が協力しながら、まちの環境や価値を高めていく継続的な取り組みを指します。
活動の内容は多岐にわたり、例えば以下のようなものが挙げられます。
・地域の美化や防犯活動
・空き店舗の利活用
・地域イベントの企画・実施
・公共空間の利活用・維持管理
・景観やまちなみの整備
これらの活動は、単なるボランティアではなく、地域の資産価値を高めたり、交流人口を増やしたりと、まち全体にとって持続的な効果をもたらすものです。
3. まちづくりとの関係
エリアマネジメントは、まちづくりの一部でありながら、より「実践的な運営」に近い性格を持ちます。都市計画や再開発などの「ハード整備」だけでなく、整備後の地域の「ソフト運営」をどう行うかが問われる時代において、その重要性はますます高まっています。
たとえば、駅前広場を整備した後、そのスペースを地域のにぎわいの場として活用し続けるには、誰がどのように管理・運営していくかがカギになります。エリアマネジメントは、そうした“その後”を担う重要な仕組みといえます。
4. 進め方のステップ
エリアマネジメントを地域で実践するための基本的なステップをご紹介します。
Step1:地域の合意形成と目的の明確化
まずは、地域の課題や将来像を共有し、関係者の信頼関係を築くことが大切です。行政、住民、地権者、商店主など、さまざまな立場の人が一緒にまちのことを考える機会をつくることから始まります。
Step2:組織づくり
活動を持続的に行うためには、協議会や法人など、地域を代表する組織体の設立が望まれます。参加する主体や役割を明確にし、無理のない運営体制を構築していきます。
Step3:活動計画と資金計画
「何を」「いつ」「どうやって」行うのかを計画にまとめ、同時に資金の確保方法を検討します。財源としては、会費や協賛金のほか、行政からの補助金、収益事業による自立的運営も視野に入ります。
Step4:実施と評価、改善
小さな活動から始めて、手応えを感じながら段階的に拡大していくことがポイントです。また、成果を見える形で評価し、活動の質を高めていく仕組みも重要です。
5. 行政の関わり方
エリアマネジメントでは、行政が直接の“主役”になることは少なく、多くの場合は「伴走者」としての関わりが求められます。具体的には、以下のような支援が効果的です。
・関係者間の調整や情報共有の場の提供
・制度や補助金の紹介・活用支援
・活動場所や設備の提供
・都市再生推進法人や景観協定など制度面での後押し
行政職員としては、「地域を信じて任せる」「過度に管理しない」「必要なときに支える」といったスタンスが求められます。
6. おわりに:持続可能なまちの未来に向けて
まちづくりの主役は、そこで暮らす人びと自身です。行政が一歩引いて支援に回ることで、地域が自らの力で動き出す土壌が育まれます。
エリアマネジメントは、まちに関わる一人ひとりが「自分ごと」として地域を支える仕組みです。行政職員の皆さまには、こうした流れを理解し、支える立場として、ぜひ積極的に関わっていただければと思います。